2013-01-01から1年間の記事一覧

『フリードリッヒとその周辺』、稲生平太郎『定本 何かが空を飛んでいる』

フリードリッヒとその周辺 (1978年) 出版社/メーカー: 日本経済新聞社 発売日: 1978 メディア: ? この商品を含むブログを見る 1978年の展覧会図録。「樫の森の修道院」のような特に有名な作品は載っていない。 彼は自分はただ月の光ばかりを描いていると言っ…

枕の下に包丁を入れて眠るとよい もしも悪夢を見たのなら その時はすかりすかりと捌いてしまって うすい刺し身のようにするとよい 油まみれの水たまりのように光るそれを やってきた男は食べるだろう 用意されたものは残さず食べるというのが 昔からの獏の流…

塚本邦雄『眩暈祈祷書』、岡林洋『廃墟のエコロジー』

眩暈祈祷書 (1973年) 作者: 塚本邦雄 出版社/メーカー: 審美社 発売日: 1973 メディア: ? この商品を含むブログを見る キリスト教テーマの自選歌集。聖書には信仰ではなく美的価値しか認めていないとのことで、自然、短歌もスタイルに走ったものになる。なの…

紀田順一郎『乱歩彷徨』、多木浩二『眼の隠喩』

乱歩彷徨―なぜ読み継がれるのか 作者: 紀田順一郎 出版社/メーカー: 春風社 発売日: 2011/11/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (8件) を見る 理想と現実の間で苦悩した乱歩の軌跡を丹念に検討していく。全集の自作解説などを見てもわかるが、乱歩本…

桃太郎

おれは桃太郎だ、桃太郎なんだと鬼が言うので あんたは桃太郎だよ どこから見てもそうだよと頷いてやる 鬼は心底ほっとした顔で でも空っぽになったような目をして 暗い森の中に帰っていく わたしはそれを止められなかった

辻原登『闇の奥』、山田登世子『リゾート世紀末』

闇の奥 (文春文庫) 作者: 辻原登 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2013/02/08 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (2件) を見る 小人伝説を追ってボルネオの奥地に消えた民族学者の行方を捜し、熊野、ボルネオ、チベットと、めくるめく冒険行がくり広げ…

ウォーカー『箱舟の航海日誌』、エドワード・レルフ『都市景観の20世紀』

箱舟の航海日誌 (光文社古典新訳文庫) 作者: ウォーカー,安達まみ 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2007/04/12 メディア: 文庫 クリック: 13回 この商品を含むブログ (21件) を見る 無垢な動物を満載するノアの箱舟に堕落した獣"スカブ"が紛れ込んでさあ大…

ストーブ

犬や猫や蛇が増えてきて だんだん部屋が狭くなってきた 布団を敷くにも食事を用意するにも いちいちまとわりついてくるので うっとうしくてしかたないのだが あとでどうにかしようと思っているうちに いつも日が暮れてしまう そうしてもう何年にもなる 今日…

阿佐田哲也『麻雀放浪記』

阿佐田哲也は色川武大の変名。 麻雀放浪記(一) 青春編 (角川文庫) 作者: 阿佐田哲也 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング 発売日: 1979/09 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 154回 この商品を含むブログ (78件) を見る 世の中には絶対に面白い…

ジャック・ブノア=メシャン『庭園の世界史』、若桑みどり『薔薇のイコノロジー』

庭園の世界史―地上の楽園の三千年 (講談社学術文庫 (1327)) 作者: ジャック・ブノア=メシャン,河野鶴代,横山正 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1998/05 メディア: 文庫 クリック: 2回 この商品を含むブログ (2件) を見る 世界史と銘打つにはいささか偏りが…

ジャック・カゾット『悪魔の恋』、ジェイムズ・ホッグ『悪の誘惑』

世界幻想文学大系〈1〉悪魔の恋 (1976年) 作者: 紀田順一郎,荒俣宏 出版社/メーカー: 国書刊行会 発売日: 1976 メディア: ? この商品を含むブログを見る フランス幻想文学の先鞭をつけ、大革命の露と消えたジャック・カゾットの作品集。軽い気持ちで召喚した…

日暮里・ザクロ

池辺一郎『ルドン―夢の生涯』、加藤耕一『「幽霊屋敷」の文化史』

ルドン―夢の生涯 幻想芸術の極致 (1977年) 作者: 池辺一郎 出版社/メーカー: 読売新聞社 発売日: 1977/07 メディア: ? この商品を含むブログを見る 画家による評伝ということもあって、技術的な部分と、ことにその背景の思想を醸成した影響関係にまで突っ込…

ピエール・ド・マンディアルグ『みだらな扉』、エーリッヒ・フロム『夢の精神分析―忘れられた言語』

みだらな扉 (1972年) 作者: ピエール・ド・マンディアルグ,品田一良 出版社/メーカー: 二見書房 発売日: 1972 メディア: ? この商品を含むブログを見る 「サビーヌ」「洞窟」「ポルノパパスの劇場」「ネズミッ子」を収録。まだマンディアルグを掴みきれていな…

中川浩一『観光の文化史』、サマセット・モーム『雨・赤毛』

観光の文化史 作者: 中川浩一 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1985/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 文学作品に現れた観光文化をその背景とともに見る。たとえばライヘンバッハの滝とその周囲の状況をシャーロック・ホームズの物語と突…

『天国・地獄百科』、吉田健一『金沢・酒宴』

天国・地獄百科 (アンデスの風叢書) 作者: ホルヘ・ルイス・ボルヘス,アドルフォ・ビオイ=カサーレス,牛島信明 出版社/メーカー: 書肆風の薔薇 発売日: 1982/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ボルヘスと盟友ビオイ=カサーレスによる古今東…

朝焼け

倉数茂『黒揚羽の夏』、ヴォルフガング・シヴェルブシュ『楽園・味覚・理性―嗜好品の歴史』

黒揚羽の夏 (ポプラ文庫ピュアフル) 作者: 倉数茂 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2011/07/05 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 51回 この商品を含むブログ (11件) を見る 両親の離婚協議のため田舎に預けられた子供たちが、土地の人々とともに一夏の…

塚本邦雄『夏至遺文』、『日本幻想文学大全 I 幻妖の水脈』

夏至遺文 (1978年) 作者: 塚本邦雄 出版社/メーカー: 湯川書房 発売日: 1978/04 メディア: ? この商品を含むブログを見る 塚本邦雄が小説も書いているとは知らなかった。歌人らしく細部の彫琢に力を尽くすスタイリストで(たとえば皆川博子、赤江瀑、中井英…

朝焼け

マンディアルグ『燠火』、『伊勢物語』

燠火―マンディアルグ短篇集 (1979年) 作者: マンディアルグ,生田耕作 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 1979/11 メディア: ? この商品を含むブログ (1件) を見る 7篇を収めるマンディアルグの第三短篇集。執拗なまでの記述が夢想を呼び出し、夢想の中に、も…

写真集など

軍艦島 全景 作者: オープロジェクト 出版社/メーカー: 三才ブックス 発売日: 2008/12/10 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 116回 この商品を含むブログ (33件) を見る 当時の生活模様をインフラに絡めて解説するのが興味深い。およそすべてが島内で賄…

鬼あざみ

夜中に地震で目が覚めて 地震が起きるたびに いろんな神社の鳥居から 小石がぱらぱら落ちているのだろうな と窓を開け閉めして もう一度、すとんと夢の中に入る 夢の中では栗の木林にいて 毬栗がぽろぽろ落ちるのを見ている 見ていたらなんだか悲しくなって …

りんご

店先でいきなりりんご齧ってやろうか 店番は慌てるだろうな 噛んだら血を吹きそうな赤いりんご いきなり齧って お金も払わずに逃げてやろうか みんな唖然とするだろうな 舟に乗って逃げてやろうか 犬も殺してやろうか 花も

紫色の紙

紫色の紙が足りなくなってしまった 急いで買いに行かないと、もうすぐなのだからと 気ばかりがいたずらに焦って どうしたらいいかわからない 今までどこで買っていたかなんて覚えてないし 手配してくれる人にも覚えがない いつもいつもこうやって 足りなくな…

かなしい唄

化粧箱や封筒の 中には宝石があるものだと 女の子はそれくらい知っている 馬の形をした雲を追いかけて 知らない道を行くと その細道の先には橋が続いて 途中、別れの言葉を思い出して しゃくりあげて泣いてしまうことも 吹く風が頬に触れて あかるい午後が夜…

国立科学博物館

零式艦上戦闘機21型

奥宮正武『大艦巨砲主義の盛衰』、J・G・バラード『殺す』

大艦巨砲主義の盛衰 (新戦史シリーズ)作者: 奥宮正武出版社/メーカー: 朝日ソノラマ発売日: 1992/02メディア: 文庫この商品を含むブログを見る 日清・日露での成功を受けて隆盛を誇った大艦巨砲主義は、戦闘が水上・水中・上空と立体化するに及んでその価値…

道しるべ

ふと箸を落としてしまい 屈みこむと、床に米粒が続いていて 点々と拾いながら進んでいく 客間へ、座敷へ、縁側へ いつしか古い蔵の脇を通り 門から出て、人通りの少ない裏道のほうへ 白く輝く米粒を追いかけ 一心不乱に進んでいく 空には月も星もなくて 笑い…