アントニオ・タブッキ『供述によるとペレイラは…』、仁科邦男『犬の伊勢参り』

 

供述によるとペレイラは… (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

供述によるとペレイラは… (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

 

不穏な情勢下のリスボンで記者として身を立てる人物の「供述」の形で物語は進む。初めてのタブッキで期待して読んだがいまいち乗れず、ただ良い作品ではあるので自分のほうに余裕がないのだろう。他の本も探してみたい。

 

犬の伊勢参り (平凡社新書)

犬の伊勢参り (平凡社新書)

 

「犬の伊勢参り」の事例を資料から追っていくことで、伊勢参りの文化や神宮の制度、触穢思想にまで話が及ぶのは面白かった。結局、犬が伊勢参りするという物語が人々の間に共有されていて、伊勢参りについていった犬、あるいはそれらしき犬を送り出したり導いたりしたというのが真相らしいが、それを支える信仰や善意や打算に思いを馳せると昔年の心性がいじらしくなってくる。人と犬との大らかな関係を透かし見ることができる楽しいテーマだった。