『藤井貞和詩集』
詩人と書いてうたびとと読むのがよさそうな。独特のリズムにのせて書かれる詩の中に、過去や現在、記憶や幻想、様々な風俗や知識を取り入れて、詩が総合的な「うた」でもあることを教えてくれる。そして、うたをうたううたびとであるということは、それが一種の芸能へとつながっていくのだということも。芸能の発生に立ち戻って書かれる詩は、狭い枠を飛び越えて、魂に関わるものになっていくのだろう。
うたびと、もしくは巫者はその身に別のものを呼び込むのであって、「物狂い」でもある。学者としての立場や社会的な関心も現れてきて詩は混迷を極める。こうして読んでいくとちぐはぐな印象があるのだけど、それが物に狂わされたことによるのか、単に編集の問題なのかはよくわからない。
ともだちのともだちも
ともだちのともだちのともだちも
みんなで振るんだ
キンゾクバッ
キンゾクバッ
(「寝物語」)