2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『長田弘詩集』

長田弘詩集 (現代詩文庫 第 1期13) 作者: 長田弘 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 1968/09 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 同時代のいくつかの死を前に、青春期の死の誘惑を振り払って生の方向に歩みを進める。その意識が戦後詩の状況…

秋元炯『幻獣図鑑』、『片桐ユズル詩集』

幻獣図鑑―詩集 作者: 秋元炯 出版社/メーカー: 花神社 発売日: 2010/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 一篇一篇がストーリーを感じさせるもので、詩の掌編的な側面がよく出ている。夢のあやふやさを定着させたような詩が多い。三十年を母の胎…

『寺山修司詩集』

寺山修司詩集 (現代詩文庫 第 1期52) 作者: 寺山修司 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 1972/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 脱出への希求がまずあって、方法的にも一所に留まろうとせず様々に挑戦している。ただそれが読んで面白い…

田沼武能『戦後の子供たち』、柴田秀一郎『バス停留所』

戦後の子供たち―田沼武能写真集 作者: 田沼武能 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1995/01 メディア: 大型本 この商品を含むブログを見る 仕事に駆り出されたり幼少の面倒を見たりと状況の悪さは窺えるものの、基本的には元気いっぱい。というか君らどこでも…

『安西均詩集』、『牟礼慶子詩集』

安西均詩集 (現代詩文庫 第) 作者: 安西均 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 1969/02 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブログ (2件) を見る 基本的には近代からの詩の伝統を感じさせる筆致ながら、平安の時代への憧憬をもとに多く書かれている…

屋根の上で何かが

風の強い真夜中 屋根の上で何かが話をしている じゅくじゅくと泥を踏むような音が聞こえる それがどんな存在の発する音なのか そもそも生きているのか死んでいるのかもわからないが 寝ている耳には話し声なのだということがはっきりわかる それはたしかに声…

路地にて

塀のそばをとぼとぼ歩く 五月のゆくえはただ次の季節を目指し 露を散らしたばらを放つように咲かせている 人はいない 付き添いの影だけで 影と影が二人で歩いているのか 葉陰の路地になにかが焼けた匂いなど嗅ぎながら 片足ずつ夢の水脈をかきわけていると …

『吉岡実詩集』

吉岡実詩集 (現代詩文庫 第 1期14) 作者: 吉岡実 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 1968/09 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る なんといっても「僧侶」が素晴らしくて、「苦力」など他にいくつかいいものがあるといっても、これ一作だけで…

『富岡多恵子詩集』、佐滝剛弘『郵便局を訪ねて1万局』

富岡多恵子詩集 (現代詩文庫 第 1期15) 作者: 富岡多恵子 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 1968/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る 世の中にはいろんな人がいて各々が人生の意味やなんやかんやといった問題を抱える中、特にそういうも…

歓待

時の終わりの草はらに似てだだっ広い 岸にこぞうの形でかしこまっていると 食事をしていかないかと誘われる ありがたく受けて こぞうが背を伸ばす ここらでとれたこばんざめの 豪勢で彩り豊かな皿が届けられて 箸を腹に刺してやると うううう うううう なん…

天沢退二郎『人間の運命―黄変綺草集』、国立西洋美術館『非日常からの呼び声』

人間の運命―黄変綺草集 作者: 天沢退二郎 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 2007/06 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 23冊目の詩集とのこと。あれだけかっちりとした散文で夢の世界を構築していたのに、ここにきて詩はだらしなく伸長した行分け…

不動の穴

庭でだいこんが生えそろっている 白くみずみずしいだいこんが土に刺さっている 知っているか だいこんの葉っぱには青虫が ものすごくよくつく ほんとうにきりがないほど だから割り箸でそいつの青首をひょいとつまんで 植木鉢の皿などにくねくねくねとのせて…

『清岡卓行詩集』

清岡卓行詩集 (現代詩文庫 第 1期5) 作者: 清岡卓行 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 1968/02 メディア: 単行本 クリック: 3回 この商品を含むブログ (3件) を見る 「どこから世界を覗こうと/見るとはかすかに愛することであり/病患とは美しい肉体のより…

水族

美しい骸骨を持つ人に会った 美しい詩を書きなさいという彼女は まだ陸地を夢見ている 昨夜から降りはじめた雨は 静かに庭を濡らしている 窓ガラスに群がるおびただしい水滴 しずくの一粒一粒に映る 反転した光 それは雨がやめば消えてしまう たまゆらに過ぎ…