『寺山修司詩集』

 

寺山修司詩集 (現代詩文庫 第 1期52)

寺山修司詩集 (現代詩文庫 第 1期52)

 

 脱出への希求がまずあって、方法的にも一所に留まろうとせず様々に挑戦している。ただそれが読んで面白いかは別で、特に詩の上で伝わってくるのは奔放さばかりで鑑賞に堪えるものは少ない。むしろ脱出の前提事項である過去・土俗・形式といった枠組みを利用したほうに本領がある。となるとやはり短歌が良い。何度も父母を殺し故郷のイメージを深めることで、己の圏域への愛憎が鮮烈さを増していく。

 

続・寺山修司詩集 (現代詩文庫)

続・寺山修司詩集 (現代詩文庫)

 

 詩人自身がアクション・ペインティングを引き合いに出して行為としての詩を標榜しており、記述された詩はその発生装置といった趣が強い。「哄笑の顔を鏡にふと見つむわが去りしあとも笑ひのこらむ」。詩が行為ということは読者の側にもそれが求められ、協働で詩を生きることが演劇にも繋がっていくのだろう。自分はそこまで極端ではないのでやはりいくらかはスタティックな短歌・俳句が読んでいて楽しかった。このどぎつい言葉たちをポケットに入れて時々感触を確かめたい。