2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

錯視

晩遅く帰った宅の 戸をからからと引いて 玄関先に靴が揃えられている その脇をすっと通る 長い廊下にはぼんやりと俯き加減の 男や女が行き交っていて もうさすがに惑わされることはないが とうに慣れた今でも なんとはなしに気にかかる あるいは 些細なこと…

『ビジュアル図解 連合艦隊全作戦記録』、『北欧の旅―カレル・チャペック旅行記コレクション』

ビジュアル図解 連合艦隊全作戦記録 (別冊宝島 2042)出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2013/07/16メディア: 大型本この商品を含むブログを見る ブラウザゲーム「艦これ」をきっかけに本書を手に取った。連合艦隊の誕生から大戦への歩み、真珠湾奇襲から大和沈…

夜中の生き物

ひじきを煮付けていて 鍋の中はまっくらやみの夜 手を差し入れればぐいとつかむものがあり イヤダイヤダと言っているうちに 連れて行かれた海の底で おまえはうみうしになる 立派なうみうしになれてよかったと 家族は喜んでいるけれど わたしはごまかされな…

盆踊り

原っぱに出かけよう そこには盆の間にだけ 夏の組合の人たちが見え隠れし 錆びついた刃物や 色とりどりの皿を持ち寄って 陽気な盆踊りを踊っている 陽気な音楽に誘われて 物を知らない子供が迷い込み 消えてしまうなんてこともあるけれど そんなことは別にい…

洪水の夜

まだ夕方だというのに眠くて すこし横になっておこうかと考えているうちに いつのまにか眠りがやってくる 目を覚ますととうに外は暗い 諦めてこのまま寝直してしまおう と、その前に水を一口 手を伸ばした枕元の感触がおかしくて 月明かりを頼りに見てみれば…

『幻想と怪奇 2』、『宮沢賢治全集〈2〉』

幻想と怪奇 2 (ハヤカワ文庫 NV 119)作者: ロバート・ブロック,仁賀克雄出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1976/06メディア: 文庫この商品を含むブログを見る ブラッドベリ「トランク詰めの女」が叙情的で良いが、しかし本書ではハイスミスの有名作品「かた…

別府湾

小学校の桜にいつか辿り着く 吉田右門 学校前の坂を上っていくと コンクリートで固められた左手の斜面に ぴたりとはめ込まれた形の地蔵がいて 土の猛威を抑えているのか 背中を見送られる心持ちで ずいぶんとほっとした 昼の空は硬質の雲を隠し持ち いつでも…

夏の空