別府湾

  小学校の桜にいつか辿り着く 吉田右門

 

学校前の坂を上っていくと

コンクリートで固められた左手の斜面に

ぴたりとはめ込まれた形の地蔵がいて

土の猛威を抑えているのか

背中を見送られる心持ちで

ずいぶんとほっとした

昼の空は硬質の雲を隠し持ち

いつでも流していけるんだぞと

大きな目玉を揺らしてうそぶく

町をつらぬく線路が

鉄橋を過ぎるときに

トタントタンと立てる音も

秘められた合図のようだ

それは誰に知られることもないが

いつも耳の奥で鳴り続ける

花には花の

水には雨の言葉が混じっていて

フェリーの行き交う藍色の水たまりが

山を映して黙っている様は

かつて蓮の花にも喩えられたのだ