『幻想と怪奇 2』、『宮沢賢治全集〈2〉』

幻想と怪奇 2 (ハヤカワ文庫 NV 119)

幻想と怪奇 2 (ハヤカワ文庫 NV 119)

ブラッドベリ「トランク詰めの女」が叙情的で良いが、しかし本書ではハイスミスの有名作品「かたつむり」がずば抜けている。孤島に新種を探しに来た学者が巨大なかたつむりにひたすら追い回されるというなんとも恐ろしい作品。サスペンスフルな恐怖を不気味なかたつむりの描写が盛り上げる。これほどストレートに拒否反応を起こさせる作品もそうそうないのでは。

宮沢賢治全集〈2〉 (ちくま文庫)

宮沢賢治全集〈2〉 (ちくま文庫)

「春と修羅 第三集」「詩ノート」「疾中」を収録。賢治特有のメタフィジックな世界は影を潜め、農村の技術者としての現実が色濃く反映されている。よくもてはやされる童話的な世界観の裏で、賢治が農村の地獄を生きて書き続けたということの意味を考える。