『安藤元雄詩集』、『大野新詩集』

 

安藤元雄詩集 (現代詩文庫 第 1期79)

安藤元雄詩集 (現代詩文庫 第 1期79)

 

内部世界の風景に目を凝らすこと。時とともに砂や水のように蓄積されていくそれは自己の枠から外へと溢れ出し、歩みにつれて軌跡を作る。それがこの詩人の詩なのかもしれない…などと考えながら読んでいたが、いまいちぴんとこなかった。詩自体は端正だと思う。

 

大野新詩集 (現代詩文庫 第 1期81)

大野新詩集 (現代詩文庫 第 1期81)

 

結核体験が影を落としているということで、重苦しい肉体感覚と死がつきまとう。家族を描くにしても周辺の人を描くにしても視線は常に死に引き寄せられ、息子を含むいくつかの死を見届けることになり、その度に詩の言葉は研ぎ澄まされていく。俳句的でさえある言葉には惹かれるもののこれを裏で支える精神を思うと痛ましくつらい。家族・友人思いな人柄が窺えるだけに余計に。併録の随筆は後年に書かれたもののようで、こちらは枯れた抒情が味わい深かった。 

詩を暗喩で語ろうとし極度に詩のことばをそぎおとすのは、みずからの私性を一挙に抽象化しようとする願望とも写る。

(青木はるみ「死を確かめ、たしかめては生へ出ていくひと」)