夜中の生き物

ひじきを煮付けていて

鍋の中はまっくらやみの夜

手を差し入れればぐいとつかむものがあり

イヤダイヤダと言っているうちに

連れて行かれた海の底で

おまえはうみうしになる

立派なうみうしになれてよかったと

家族は喜んでいるけれど

わたしはごまかされない

きっと金持ちの慰みものにされ

死ぬまでひじきを食わされることになるのだ

腹一杯につめこまれ

泣いても喚いても食わされて

体の内側からまっくらやみにされてしまう

そのようにしてじわりじわりと

黒いあぶくを吐くだけの存在になる

風呂釜の底でわずかに身じろぎする

どこの誰の生にも余計な

夜中の生き物になるだろう