『木原孝一詩集』、『高良留美子詩集』

 

木原孝一詩集 (現代詩文庫 第 1期47)

木原孝一詩集 (現代詩文庫 第 1期47)

 

 硫黄島の生き残りということが関係しているのかさだかではないが(関係してないことはないだろうが)、過剰なまでにドラマチックに戦争と社会を歌う。段落を細かく分けて字下げするなどして、詩の中で文字通り高低差が生まれているような趣すらある。時に段落と段落の間に対話が生まれていることも。放送詩劇に取り組んだとのことでなるほどと納得した。

 

高良留美子詩集 (現代詩文庫)

高良留美子詩集 (現代詩文庫)

 

 「物の内側へはいって物をひらき、物に語らせること」 内と外の引き裂かれを経験した詩人にとって、それが自分を取り巻く世界と新しく出会う手段なのだろうが、肝心の詩がどこまでいっても垢抜けない。短いものや心情を書き流したものにいくつか読めるものがあるとはいえ、試みが空転している様が目につく。詩論ではとてもいいことを言っているのに。