『日和聡子詩集』、『三好豊一郎詩集』

 

日和聡子詩集 (現代詩文庫)

日和聡子詩集 (現代詩文庫)

 

 古風で特殊な言語感覚の中にユーモアや幻想や恋が通う。言葉の省略の仕方が絶妙で、阿と言えば吽と答えるようななんらかの了解のもとに詩行が積み重ねられている感があって、その独特の空間に遊ぶことができる。ここまで言葉を切り詰めているのにばらばらにならないのは明確な物語が詩の中にあるからだろうし、徐々に小説に接近もしていく(実際、小説も書いているとのこと)。書法が特殊ゆえに軽くしらけを感じるところもあったものの、基本的には軽やかで深刻すぎない詩。とても好きな詩人です。

 

三好豊一郎詩集 (現代詩文庫 第 1期37)

三好豊一郎詩集 (現代詩文庫 第 1期37)

 

 戦時中に書かれ『荒地』の創刊号を飾って戦後詩のひとつの基調となった「囚人」の詩人。重苦しく難解な戦後詩の中でも特にその度が激しい詩風で、暗鬱な言葉の世界に閉じ込められて否定のうちにのたうつような感覚に襲われる。「私の心臓の牢屋にも閉じこめられた一匹の犬が吠えている/不眠の蒼ざめた vie の犬が」(「囚人」) この過剰にネガティブな言葉に触れるのは正直苦しいが、そのかっこよさに惹かれるのもたしかなところ。というかかなりロックな詩だと思う。