秋元炯『幻獣図鑑』、『片桐ユズル詩集』
一篇一篇がストーリーを感じさせるもので、詩の掌編的な側面がよく出ている。夢のあやふやさを定着させたような詩が多い。三十年を母の胎内で過ごす男、都市の中で人知れず膨れ上がる森、人魚、山羊の面をつけたバス運転手、子猫の生る樹など異形が跋扈し、中にはほとんど怪談といっていいものもある。平易な言葉でさらっと読めるが読後感はかなり奇妙。天井を破って襲来した獣じみた天使と交接する「襲来」はエロティックさと不穏さが同居して忘れがたい。
外来のものであったビートを実践してフォークへの道を開いた詩人とのこと。過剰なまでに口語的で、まるで喫茶店で交わされる会話に聞き耳を立てているような気分になる。あえて省略を多用したり人の名前を出して説明がなかったり、美的な修辞は控えめで、内容も政治絡みや現実に根ざしたもの。時勢もあるのだろうけど夢がなさすぎてあまり好きではないな。