池辺一郎『ルドン―夢の生涯』、加藤耕一『「幽霊屋敷」の文化史』
画家による評伝ということもあって、技術的な部分と、ことにその背景の思想を醸成した影響関係にまで突っ込んだ解説がなされる。「見えないものを形にする」ルドンの姿勢とともに、その源流となったドラクロワやロドルフ・ブレスダンについて。まださほどルドンの美術に触れたことがないので本書を手引としたい。
タイトルにやや偽りありで、幽霊屋敷の文化史というよりはディズニーランドのホーンテッド・マンションを取っ掛かりにゴシック史にも言及しつつ、そこに使われている技術の源泉である興行の歴史を見るものである。種村季弘とかあのあたりを新書に落とし込んだ感じで読みやすい。ゴシックがその始まりから人工的であった点、家と荒野の霊、あるいはマダム・タッソーの来歴などが個人的に気になった。