道しるべ
ふと箸を落としてしまい
屈みこむと、床に米粒が続いていて
点々と拾いながら進んでいく
客間へ、座敷へ、縁側へ
いつしか古い蔵の脇を通り
門から出て、人通りの少ない裏道のほうへ
白く輝く米粒を追いかけ
一心不乱に進んでいく
空には月も星もなくて
笑いかけてくれる人もいなくて
犬は知らんぷりで寝に帰ったし
ただもう米粒がどこに続いているのか
それだけが気になって歩を進めると
顔に蜘蛛の巣がかかったり
茅で足を切ったりして
心細さが胸の奥にしみてくる
背中を冷たい汗が流れ
山の中で夜を過ごすのはいやだと
そろそろと暗路を見透かせば
米粒の先には塚があり
秋の空気に白々と気持よさそうな
されこうべがひとつ
笑いをこらえて待っていた