阿佐田哲也『麻雀放浪記』
世の中には絶対に面白い本というのがいくつかあって、これはそのうちのひとつ。なのでとやかく言っても仕様がない。勝負師たちの戦いを通して、東京の焼け跡は死肉を食らう魔界と化す。
舞台は大阪へ。前巻はどうしようもなく暗い夜の雰囲気があったが、こちらは徹夜明けの朝のような明るさ。負けた人々の末路が切ない。
時代の移り変わりとともにリーマン麻雀が隆盛し、バイニンたちは肩身を狭くしていた。何かに属してせせこましく生きる人生と、何にも属さず野良犬のように這いずる人生。あれだけ博打に生きた人々が時代にすり潰されていく。
賭博の本質は暴力と喝破しながらも、そう簡単に割り切れずにひたすらに麻雀を打つ人々の姿が描かれる。シリーズを読み終えてみると、戦後日本そのものの青春時代だったのだなと思う。