秋元炯『血まみれの男』、嶋岡晨『詩とは何か』

 

詩集 血まみれの男

詩集 血まみれの男

 

 少し血なまぐさいショートショート集といった感じで読み進めてしまった。狭い枠から溢れ出て夢の領域にまで広がった身体性、縁の定かならぬその様相が不安感を煽るところに眼目があるようだ。「夢の中の町は 私の記憶を母体として 増殖し変形して 本当の姿とは大きくかけ離れたものに 変わろうとしているのかも知れない」(「尾道」)

 

詩とは何か (新潮選書)

詩とは何か (新潮選書)

 

 明治の「新体詩」としての始まりから平成の定形論争あたりまでをフォローした詩史の試み。といってもこの紙幅で記述し尽くせるものではないので大づかみに歴史を眺めるに留まるが、それでも詩の発展がどのような力学に支えられてきたのかはよくわかる。思想的背景と実作が突き合わされており、なんというか手元にあれば非常に便利な一冊。「詩は、つねにそれまで非詩(詩ではない)とされたものによって、その歴史を革める。」