松葉一清『帝都復興せり!』、小池昌代,塚本由晴『建築と言葉』

 

 昭和10年刊行の写真集『建築の東京』に収められた建築を踏査して東京の原点を探る(本書刊行は1988年)。開化で海外の技術の流入を見た日本はそれをある程度消化し、次いで一部の人々によって新しい建築が模索されていた。そこに関東大震災が発生したことで復興のための需要が生まれる。もう少し時代が下ればモダニズムや戦争の影響を被るわけで、昭和初期のこの頃はまだ自由な気風の残る凪のような時期だったらしい。東京の現在を考える上でも、また単に古い時代に思いを馳せるにもぴったりの一冊。

 

建築と言葉 ---日常を設計するまなざし (河出ブックス)

建築と言葉 ---日常を設計するまなざし (河出ブックス)

 

 建築家と詩人の対談。この不思議な取り合わせはどういうことかというと、時間と空間の中で人間や環境の振る舞いに寄り添う建築は、きめ細やかな言葉でまずそのイメージを与えられなければならない、そして形になった建築がさらに人間に寄与していく…という言葉と建築の協働が考えられている。出力されるのが詩か建築かの違いだけで本質的には同じものを操作していると言っていいかもしれない。この認識から身体感覚やコミュニティなど様々に話題は及び、対談の途中に東日本大震災の発生を見る。建築の今日的な課題の一面がよくわかる。