世界幻想文学大全

世界幻想文学大全 幻想文学入門 (ちくま文庫)

世界幻想文学大全 幻想文学入門 (ちくま文庫)

幻想文学についての論を集めたアンソロジー。幻想文学とはどういったものを指すのか、その歴史は、受容は、など、非常に行き届いたチョイスで、これ一冊読めばある程度ジャンルの理解が得られる。中でも圧巻はやはりラヴクラフトによる怪奇小説通史で、自分が今までに読んできた作家が取り上げられると思わず快哉を叫びたくなる。『世界幻想文学大全』続きの二巻も楽しみです。

世界幻想文学大全 怪奇小説精華 (ちくま文庫)

世界幻想文学大全 怪奇小説精華 (ちくま文庫)

有名どころが揃い踏み。新味はないけど一堂に会すると異様だし、なによりこのボリュームには圧倒された。取りこぼしていた作品も拾えて嬉しい。収穫はメリメ「イールのヴィーナス」、後半の破綻が妙に気にかかるリットン「幽霊屋敷」、気持ち悪いアラルコン「背の高い女」、気持ち悪いキローガ「羽根まくら」、ジャン・レイ「闇の路地」。リットンとキローガは他の作品にもあたってみたい。それとベルギー幻想派作家はもう少しきちんと紹介してもらえれば。

世界幻想文学大全3 幻想小説神髄 (ちくま文庫)

世界幻想文学大全3 幻想小説神髄 (ちくま文庫)

『怪奇小説精華』に続いて読了。この巻は曖昧模糊としているものの芯から寒からしめる魅力があり、まるで厚い霧の中を手探りで進むように感じられた。リラダン「ヴェラ」のこの世ならぬ愛、霊妙不可思議な世界が顕現するフィオナ・マクラウド「精」、マッケン「白魔」、ダンセイニ「バブルクンドの崩壊」、透明な悲しさが残るシュペルヴィエル「沖の小娘」、シュルツ「クレプシドラ・サナトリウム」の彼岸での日々。幻想はそうそう容易に振り切れるものではなく、あるいは自分はこれからもずっと霧に囚われたままなのかもしれない。