赤江瀑『海峡』、能登路雅子『ディズニーランドという聖地』

海峡―この水の無明の真秀ろば (1983年)

海峡―この水の無明の真秀ろば (1983年)

俳優として将来を待望されるも精神に変調をきたしてしまった友人を追懐しつつ、彼岸と此岸を隔てる、あるいはそれ自体が道でもある「海峡」について語る幻想的なエッセイ。水は海峡へ、さらに夢の領域へと通じ、流れの中に小野小町や歌舞伎や血天井といった「怪物」を隠している。赤江瀑の本は初めてだったが昔から知っているような不思議な感触を得た。第12回(1984年)泉鏡花文学賞

ディズニーランドという聖地 (岩波新書)

ディズニーランドという聖地 (岩波新書)

本国アメリカのディズニーランドは、創始者のウォルト・ディズニーが自身の幻想を煮詰めに煮詰め、結果的にアメリカ大衆の幻想が具現化したものであった。それはもはや個人の幻想ではなくアメリカの聖地と化し、さらには西欧白人社会という特殊なイデオロギーをも反映している。本書はウォルト・ディズニーの生涯を辿ることでディズニーランドという祝祭空間の絵解きを試みる。現実を徹底的に否認して本物よりも本物らしい偽の幻想世界を追求するディズニーの姿勢には、頭が下がるとともにうそ寒い思いを禁じ得なかった。さらりと読めて面白い良書。