論文メモ(記憶、異界、パリ)
愛する者を失ったロラン・バルト、シャトーブリアン、アウグスティヌスらの自伝作品を「喪の作業」と位置づけ、その「喪」の乗り越えにあたって自伝が抱え持つ逆説の構造を論じる。自伝だけではなく時間と記憶の中で書くことそのものの困難へと通じる考察。
アナトール・フランスの作品に現れる異界および異教について。記憶と異界の結びつき、あるいはオスマン以前の古いパリの思い出などいくつか気になる点あり。作品のダイジェストとして気楽に読める。
ネルヴァルを軸に、19世紀のパリ大改造によって「歴史の記憶と個人の記憶が同時に消滅」していく様子を辿る。後半にはネルヴァルの死の詳細が書いてある。
ネルヴァルが三日間の彷徨を描いた『十月の夜』読解。本作品が『オーレレリア』の前段階をなすとともに、ネルヴァルの幻想への志向が当時の「写実主義者」の横行を前提としていたことがわかる。