『遠い日の絵本―谷内六郎画集』、岡田刀水士『幻影哀歌』

 

遠い日の絵本―谷内六郎画集 (1975年)

遠い日の絵本―谷内六郎画集 (1975年)

 

 世間的には『週刊新潮』の表紙を26年間担当した人ということで有名らしい。病弱のため窮乏し、絵も「病気で寝ている時の感覚」「押入にこもるような感じ」で描き続けたとのこと。子供たちの遊ぶ素朴な情景を描きながら、同時に、子供のようなプリミティブな幻想が入り交じる。たとえば、バスが来ると周囲の森がライトに照らされて「緑の小坊主がバスに乗って来るよう」だとか、蚊帳の中に寝ていると青い麻の部分が深い山で縁が峠道に見えるとか、そういったものを実際絵にしている。文庫でもいくつか出てるのでそっちも探してみたい。

 

岡田刀水士『幻影哀歌』

散文詩だが普通の文章ではない。意味が読み取れると思えて、その実、論理が絶妙にはぐらかされているのだから、霧の中を手探りで進んでいるようだ。それでも読み取れるところからすると、不幸のうちに死んだ人が塔や紫陽花やホタルブクロといった異形に姿を変えて存在している、そういったものとの交流ということらしい。だが<私>の生死すらも判然とせず、透明な哀しみに包まれてこの世の外の薄明かりをさまようのを見せられている心持ち。内容よりこの幽明の情緒を感じさせるところに眼目があるのだろう。長く読める詩集だと思う。