『粒来哲蔵詩集』、『諏訪優詩集』

 

粒来哲蔵詩集 (現代詩文庫 第 1期72)

粒来哲蔵詩集 (現代詩文庫 第 1期72)

 

 散文詩の人。晦渋な筆致で別世界の様子を描き、それはカフカ風であったりエッシャーの騙し絵風であったり、あるいは土俗を感じさせる生活誌であったりする。詩人自身は「寓話」と言っているものの寓意は容易に読み解けるわけではなく、道筋のさだかならぬ迷宮を辿るような気分を惹起させるところに眼目があるのかもしれない。解説で粕谷栄市(詩人の従兄弟)が言うように「私」を追求することで特殊な世界に到達しているというのは納得がいくし、その意味で粕谷への影響は大きいのだろう。

 

諏訪優詩集 (現代詩文庫 第 1期73)

諏訪優詩集 (現代詩文庫 第 1期73)

 

初期はモダニズム風のメルヘン、それからビートの洗礼を受けて旅の詩人へ。西脇順三郎芭蕉の抒情と寄り添うように旅に夢を探り、やがて女性との生活を描きはじめる。旅の中で夢を、詩を求めるのがおそらくこの詩人の資質であって、まるで求めるものを手に入れたかのごとく男女の関係に落ち着くのは少し納得がいかない。女言葉も今読むと不自然で恥ずかしい。でも概ねは良い詩を書く人で、旅の中で醸成された寂しさの感覚は胸にしみ入る。流転の抒情。