『荒川洋治詩集』
鋭い方法意識で現代詩なるものを問い直した詩人。技術で書かれる詩はたしかにそれまでの詩とはまったく趣が違うし、何が書かれているのか読み取るのが困難なことも多い。しかしそれは散文では不可能な詩の表現であって、「制度」が切り捨ててきたものでもある。そのことが了解されれば、この詩人の精緻な技術の背後には、自らの弱さの自覚や、葬られたものへのシンパシーが感じられる。臆病さや優しさと言ってもよくて、この詩人のおかげでずいぶんと詩の世界が開けたのだろうと思う。詩も良かったがエッセイが面白かったので今後追ってみたい。
露悪的だったり品がなかったりというポーズの詩が増えてきて、あいかわらず面白いのかつまらないのかよくわからない。とはいえこの困惑は意図的に作られていて、一定のラインから上にも下にも行かないように厳しく制限されている。その持続する筋力のようなものが見所と思う。傍線を引いてわざわざ自分の詩のすごいところを示すなんてこともしており、たしかに技術的には巧みで、読んでいるとどうしても「詩人のための詩人」とか思ってしまうけど本人は嫌がりそうだ。