大岡信編『現代詩の鑑賞101』、佐伯順子『泉鏡花』

 

現代詩の鑑賞101 (ハンドブック・シリーズ)

現代詩の鑑賞101 (ハンドブック・シリーズ)

 

 詩が読みたくなったので現代詩文庫でもと思い、そのカタログ的に本書を手に取った。戦後から荒川洋治あたりまでの有名な作品が、たとえば田村隆一なら「腐刻画」、大岡信なら「地名論」というように、まず間違いはないところが選ばれている。解説も1篇ずつ丁寧になされていて読み応えは十分すぎるほど。現代詩を読みたい人にはうってつけの良質なアンソロジーです。

 

泉鏡花 (ちくま新書)

泉鏡花 (ちくま新書)

 

 「日本橋」「夜叉ケ池」「草迷宮」をテキストに、古典芸能にも通じる様式的な演劇性が作品にどのように表れているかを精査するとともに、演劇性が直截に影響するところの映画・舞台・漫画になった場合を比較検討する。視覚や聴覚面での喚起力、語りそのものの芸、それから能に通じる構造のダイナミズム(現在-過去-現在の構造、回想の幻想性)など、鏡花作品の形式面の特色がよくわかる。鏡花が芸能から継承したものがいかに大きかったか。それとそれを下支えした鏡花のメンタリティも少し気になった。

 過去の<回想>が小説に、戯曲と共通する会話主体の形式をもたらすということ、さらに、回想者の「仕方話」としての"声の芸"を引き出すという"劇的"な効果が生じること