小林章夫『地上楽園バース』、スーザン・ソンタグ『夢の賜物』

地上楽園バース―リゾート都市の誕生

地上楽園バース―リゾート都市の誕生

イギリスの温泉地バースの軌跡を辿る一冊。ローマ人に見出されて一度は廃れたものの、一人の賭博師の手によって繁栄を遂げ、郵便制度や宗教運動の発展とともに名声を高めていく。ジェイン・オースティンの作品などから見るバースの隆盛と失墜は、個人的に別府の温泉地を思い浮かべて感慨深かった。

夢の賜物

夢の賜物

自分が見た夢を観察し、それを日常にフィードバックする。ここでは夢への批評意識が常に先行しているため、現実と夢が重なることはない。ではそうした自己と対象との隔たりをどう解消するか…という試行錯誤の物語なのだけど、ソンタグの処女作という文脈がなければ結構厳しい。逆に言うとソンタグの姿勢はよくわかるので、彼女の日記など他の作品とともに読むと得るものがあるのではないかと思う。