『堀川正美詩集』、『渡辺武信詩集』

 

堀川正美詩集 (現代詩文庫 第)

堀川正美詩集 (現代詩文庫 第)

 

 大雑把に作品を追っていくと、自然を描いてそこに永遠の力を見るもの、次いで現実の社会の影絵のごときものと変遷していく。だがこうした見方はさほど意味を持たなくて、あくまでも一篇の中の言葉の使用に眼目がある。意味が取れそうでそれが困難な、脈絡を欠いてイメージの飛躍に満ちた詩は、有り体に言ってわけがわからない。が、この詩人においてはそのような言葉の領域を拡げる試みが技芸として極められている。吉増剛造が愛読していたというのもなんとなくわかるような。

 

渡辺武信詩集 (現代詩文庫 第 1期35)

渡辺武信詩集 (現代詩文庫 第 1期35)

 

 夜の眠りの中、夢と記憶と無意識の領域にて他者との繋がりを確認し、朝の目覚めの彼方へと出発が歌われる。愚直なまでの<きみ><ぼくたち>への呼びかけは60年代を反映してもいようし、観念的な言葉の世界は奇妙に垢抜けない感じがあって、(実際はどうであれ)社会に出る前の浮世離れした青春の雰囲気を漂わせている。たまに現れる言葉遊びもスパイスになっていて楽しい。「やねのうえにおひさまがほしいの/はねがほしいのふねがほしいの/あついことばはいつもほしいの」(「うた」)なんてそのまま歌えそうだ。

あと、詩篇を連ねることによってひとつの中心的イメージを目指すということが詩論で言及されている。詩集の方法論というか。