『岡田隆彦詩集』、『安東次男詩集』
若いエネルギーに任せて、狂気やリビドーや諧謔、そして一抹の憂いを込めて突き進む猥雑な歩行。何が書かれているかというよりこの激しい身振り手振りそのものに刻印された時代の空気を味わうべきだろう。詩誌「ドラムカン」の創立に参加しているとのことで、この肉体性を前面に押し出した猥雑さは周囲にもある程度共有されていたのでは。ジャズやビートの影響も?
「世界は/傷のうえに傷がかさなつてできていて、/どれがふるいのやら/あたらしいのやら/わからない」(「飢え」) 死者の側、負けたるものの側、あるいはそれらすら超越した薄明の世界で書かれる詩は、強い否定性をともなって屹立する。尖鋭な方法意識に導かれた詩行を追っていくと、虚の叙情とでも言いたいような硬質さがあり、イメージの重層は超現実の視覚を形作る。名高い「みぞれ」の他に初期の「戦場が原」も良かった。憶えておきたい詩人。