『白石かずこ詩集』

 

白石かずこ詩集 (現代詩文庫 28)

白石かずこ詩集 (現代詩文庫 28)

 

 朗読前提の詩なので、目で追う分には本来の味わいは伝わらないかもしれない。話し言葉の導入(特に翻訳調の口語)、響きの面白さの優先、長大化など、やはり音声の影響下にある。性愛がごく普通に扱われていたりと内容も赤裸々で、詩論を読むと、こうした試みはすべて詩の単一化を防ぐ目的で意識的になされていることがわかる。詩に声を引き入れて交じり合っていく姿は、きりもみしながらもただただ自由だ。

 confuseをおそれたり、拒否している詩人の作品は、もっぱら退化の一途をたどっている。多くの退化しつつある、あるいはすでに退化した詩人の作品の、退化の過程をみるといい。confuseしていない。

 

続・白石かずこ詩集 (現代詩文庫)

続・白石かずこ詩集 (現代詩文庫)

 

 声つまり身体性を得た詩は、その陶酔を、狂気をも引き入れて、幻想世界へと突入していく。聖なる淫者であり巫女である詩人の歩みは長い旅と化し、詩は否応なく長篇となる。詩人のパワフルな歩調に合わせて読むなら感興もあろうが、体力のない自分はいささか置いてけぼりを食うことになった。