『オトラント城 / 崇高と美の起源』、三杉隆敏『海のシルクロードを調べる事典』

[第4巻 ゴシック] オトラント城 / 崇高と美の起源 (英国十八世紀文学叢書)

[第4巻 ゴシック] オトラント城 / 崇高と美の起源 (英国十八世紀文学叢書)

「オトラント城」は言わずもがなゴシック文学の原点。今となってはおよそ他愛のない話とはいえ、仕事に倦み疲れた召使が女中部屋で密かに娯しんだとのことで、超常現象、ロマンス、悪役の造形、意外性を狙った筋立てなど、後続の大衆作品へと受け継がれたであろう要素が目を引く。個人的には超常現象が夢に材を取られている点に注目した。

「崇高と美の起源」は崇高と美を定義・検討し、それが別々のものであると論じる。崇高はある種ネガティブな要素を取り込んだ概念であり、ゴシックに不可欠な恐怖や不可解は崇高に資するものである。ちと強引かなと思うが面白い。下地にこのような理論化があったからこそ一ジャンルとして隆盛を誇ったのだと知った。

海のシルクロードを調べる事典

海のシルクロードを調べる事典

シルクロードは大別して陸路が二つと海路があるという。東西交易のために盛んに利用された海路は、各地にその痕跡を留めつつ現在に至る。本書は海のシルクロードに関するキーワードを集大成したもので、都市・特産品・船・遺跡や沈没船・人物・文献などを簡単に解説している。著者の関心が陶磁器にやや偏っており、全体的に雑然とした印象は否めないが、一応は広くカバーしているので確認に使える(年表があればよかったのだけど)。ただし確度は少々心許ない。例えば「キャメロンハイランド」を「カメランハイランド」と表記していたりする…。