小谷真理『ファンタジーの冒険』、十辺千鶴子『世紀末ロンドンを翔んだ女』

ファンタジーの冒険 (ちくま新書)

ファンタジーの冒険 (ちくま新書)

ファンタジーを時代のカウンターカルチャーと定義した上で一九世紀以降の流れを紹介する。ロマン主義に影響を受けたマクドナルド、ラヴクラフトを中心としたパルプコミュニティ、トールキンとルイスのインクリングスと、黄金期がきちんと押さえられておりわかりやすい。ただ時代を下るほどに細分化していき、大体70年代以降は拡散して混沌とした状況になる。出版が98年と少し古いので注意。

世紀末ロンドンを翔んだ女―メアリ・ウォルストンクラフトを追う旅

世紀末ロンドンを翔んだ女―メアリ・ウォルストンクラフトを追う旅

フェミニズムの創始者とのことだが、『フランケンシュタイン』のメアリー・シェリーの母といったほうが通じるだろうか。一八世紀に生きたメアリ・ウォルストンクラフトの伝記を交え、著者はメアリの生きた痕跡をロンドンに探す。なにしろ200年前の人物なのでほとんど何も残っていない。が、うらぶれたロンドンの場末の様子は、思い入れたっぷりの伝記記述に引き立てられてなかなか読ませる。まだ女性の権利が少しも考慮されない時代、フランス革命や出版界の様子、当時の英国のサークルの雰囲気が伝わってきた。