目黒区美術館『線の迷宮II-鉛筆と黒鉛の旋律』、ジュール・ヴェルヌ『』

目黒区美術館『線の迷宮II-鉛筆と黒鉛の旋律』

2007年の展覧会図録。鉛筆、シャープペンシル、消しゴムという極めてシンプルな画材を用いる9人の作家が紹介されている。中でも感銘を受けたのは小川百合と篠田教夫の画で、小川は画面の隅が暗くぼやけた中に薄暗く浮かび上がる図書館や階段を、篠田は海辺の景物を細密に描くことで異様な形状の世界を現出させる。闇を凝集して人間の領域の外を描いたような画面がたまらない。

 

地底旅行 (創元SF文庫)

地底旅行 (創元SF文庫)

 

 実際の紀行文や冒険記の延長上にあることを思わせる物語で、世界を分節し把握しようという欲求が、いささか煩瑣なまでの科学的記述に読み取れる。真理への欲求を燃料にして複数のキャラクターをそれぞれの役割のもとに駆動することで幻想に突き進むのがヴェルヌの肝だと思う。個人的にはアイスランド小説として読めるのが嬉しかった。