『吉行理恵詩集』、『啄木のうた』

 

吉行理恵詩集 (現代詩文庫 第 1期65)

吉行理恵詩集 (現代詩文庫 第 1期65)

 

 「国防色の籠の中で/赤ん坊猫のお腹から はらわたがとび出しています」(「圧死」) 静かな狂いを感じさせる幻想が訥々と語られる。この「訥々」というところがポイントで、改行や連の区切り、内容の飛躍が不安を堪えながら言葉を絞り出すような語り口を生んでおり、いつこの精神が崩れてしまうのだろうかと不穏な空気が漂っている。それに加えてですます調が多く用いられているのが狂気を必死に抑えつけているようでもあって、詩はメルヘンの色を帯びる。寡作とのことで収録数は少ないが素晴らしい詩人を見つけた。

 

啄木のうた (若い人の絵本)

啄木のうた (若い人の絵本)

 

 装丁があまりにかっこよいので手に取ったら中身もよかったし、まとめて読んだことのなかった啄木を読むいいきっかけになった。どこにもやりばのない生のもどかしさ、ついに荒涼とした場所に落着せざるを得ない悲哀が、どんどん気持ちを荒ませてくれる。まあたまにはこんなのも、と思いつつぢっと手を見る…。