残されたもの

不発弾を掘り出したというので見にきたが

大きな穴が埋められもせず空いているだけだった

校庭には名残の雪が汚れた骨のようで

からっ風が髪を乱して吹き去っていく

花壇にはパンジー どれも顔みたいに見える

池の鯉は氷の下で口をぱくぱくさせている

下校の時刻を告げる鐘は消えやらず

やがてあたりは夜の闇にまぎれて

念のためにもう一度覗きこんだ穴の底にひとつ

小さな白い卵が産み落とされていた