遠くから冷たい風が吹いてきて

ぺろりと剥げた顔が排水口に吸いこまれた

あわてて手を突っこんでももう遅い

その日から鏡もガラスもすっかり曇ってしまい

自分の顔というものがわからなくなった

写真を見返してもぼんやりとして

拭われたような暗闇が残されている

そのうち新しいのが生えてくるよと笑う友人も

ふとした瞬間に眉をひそめている

やはり取り返しのつかないことなのだと思う

なんといっても遺影に使う顔もないなんて

そんなものは豆腐と同じではないか