2014-02-03 顔 詩 遠くから冷たい風が吹いてきて ぺろりと剥げた顔が排水口に吸いこまれた あわてて手を突っこんでももう遅い その日から鏡もガラスもすっかり曇ってしまい 自分の顔というものがわからなくなった 写真を見返してもぼんやりとして 拭われたような暗闇が残されている そのうち新しいのが生えてくるよと笑う友人も ふとした瞬間に眉をひそめている やはり取り返しのつかないことなのだと思う なんといっても遺影に使う顔もないなんて そんなものは豆腐と同じではないか