多木浩二『ヨーロッパ人の描いた世界』、廣野由美子『批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義』

 

 大航海時代の到来によって世界を拡充してきたヨーロッパの「知」は、その過程で多くのイメージを生み出している。本書はヨーロッパが外部の世界をどのように可視化してきたかが、図像資料の分析から明らかにされる。たとえば現地の観察で得られたリアルなイメージは、それを元にしてヨーロッパ的に描き直されたりした。そこから見えてくるのは新旧世界の政治的力場だ。西洋が遭遇した他者経験は現在の我々の思考にも遠く響いており、決して無関係ではないだろう。

 

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

 

 作品の内部にとどまる形式主義的アプローチと、作品を使って外部を明らかにするアプローチ。この二分法を知っているだけでもかなり違ってくる。月並みだがこういう本はもっと早い時期に読みたかったな。