お供え

夜中に窓枠がぴしりと鳴る

夢のなかから呼び戻されて

枕元をさぐった手に触れるものがあり

それは感触で人の耳だとわかる

よく見えないがそれはたしかに二切れの耳で

ゴムのおもちゃのようにも思える

あるいは狩ったねずみを主人に供えるようにして

猫がここに置いていったのかもしれないが

うちでは猫なんか飼ったことはない

するとこれはいったいどうしたことだろう

おそるおそるこめかみに手をやり

自分の耳を確認するわたしを

巨大な猫がおもしろそうに見ている