人さらい

鏡を覗くと知らない人が映っている

引きつった頬はまるで人さらいのようだ

人さらいの口から人さらいの牙がにゅうっと伸びてきて

葡萄の彫りのある鏡を突き破りそうになる

あわてて毛布をかぶせて

奥の倉庫にしまっておくことにする

人さらいはこわい

人さらいは恐ろしいものだ

そうつぶやきつぶやき 畑に出て

土をいじったり草を抜いたりしている

時々そこでは子供やおんなの骨が見つかるのだ

収穫をひかえたトマトやきゅうりは

どんな悲鳴をあげようかとわくわくしている