2013-07-14 トロイメライ 詩 雨戸を閉めきった家が並ぶ かんかん照りの通りを行く 夏の盛りの昼日中 打ち水のあとも乾き果てた道には 人も車も、猫の一匹もいない 影ですら焼きつくよう こんな時にどこからか トロイメライなんて流れてきたら 少しはいい気分になるかもしれない 雨戸の向こう 井戸の底みたいな暗がりに 親戚の人々が一同に会し お嬢さんがピアノを披露していたり 息をつめて演奏を聴く人々が 豪勢なお膳を囲みながら ゆっくりと溶けていったり 庭では百日紅が ピンクの血を流していればいい それが物憂げに 夏を封じ込めたまま 千年も続けばいいのだけれど