岩佐なを『しましまの』、入沢康夫『詩にかかわる』

 

しましまの

しましまの

 

 後書きで言われているようにどんどんゆるくなってきて、異形は異形のままに、普通切り捨てるような表現もなるべく生かされていると感じる。たとえば括弧による補足とか、別にそんなの説明せんでも…みたいな記述が挟まれて、押し拡げつつ細部を取りこぼさない。だらしないと見るか優しいと見るかで評価は変わってきそうだ。

 

詩にかかわる

詩にかかわる

 

 散文集成。拾遺的な印象は否めないが面白いトピックスが拾える。自分が気になったのは、入沢氏の名作「失題詩篇」が元は16篇の連作中のひとつだったこと、詩への信頼とその原点にある感動に度々言及していること、本文決定(校訂)の困難さについてだろうか。それとネルヴァルの死んだ場所についてはこれ以上ないのではというくらい詳細で、現場を描いたものとして残っている5つの図版はありがたかった。こうして見てみると、原点の意識と追求という姿勢が窺える。