『吉本隆明詩集』、コレット・スィヤール『ベルギーの美術』

 

吉本隆明詩集 (現代詩文庫 第 1期8)

吉本隆明詩集 (現代詩文庫 第 1期8)

 

 戦後思想界に独特の地歩を築いた吉本隆明。ごく初期の詩を見れば、風景を空間軸と時間軸で眺めるというような視線が基礎にある。時代が進むと「ぼくたち」という大きな人称に呼びかける言葉が増え、だがそれとも孤立して出発(追放)に向かう。正直言って自己陶酔が臭く感じられるけど、それなりに感動的な出発ではある。160ページ中に詩は60ページ足らずで、収録された論考を眺めるとやっぱり本質は批評家なのだろうな。もう少しあとにいい詩があるはず。でも追いかけるかというと、うーん。

 

ベルギーの美術―中世から現代まで

ベルギーの美術―中世から現代まで

 

 前半はフランドル派からの流れ。ベルギー独立が19世紀なので、特にベルギー美術といえばそれ以降になるのかな。クノップフ、グザヴィエ・メルリ、ウィリアム・ドグーヴ・ド・ヌンク、レオン・スピリアールト、サードレールといった象徴主義(いわゆるベルギー幻想派)の画家が美味。