フィオナ・マクラウド『ケルト民話集』、内田樹『映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想』

 

ケルト民話集 (1983年) (妖精文庫〈31〉)

ケルト民話集 (1983年) (妖精文庫〈31〉)

 

 悲哀の色濃さはケルトの運命観によるものか、と思ったが、神秘主義思想に関連したケルト復興運動が背景にあるとのことで、少し差し引いて考えるべきなのかもしれない。とはいえ物語の美しさはたしかなもの。死人の罪を代わって背負う「罪を喰う人」は特に忘れがたい。

 

映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想 (文春文庫)

映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想 (文春文庫)

 

 映画の読解を通して現代思想を紹介する一冊。と言いつつ、やっぱりこれは映画評論かな。フロイト-ラカン精神分析的な読みは手放しで賛成することはできないので、そこは留保付きで読み進めた(やはり「物語」として楽しむものだと思う)。なんにしろ、多様な解釈を許す作品は良作ということで。バルトの映画論、マクガフィンに関しては今後映画を観るにあたって役立ちそう。また、「アメリカン・ミソジニー」の章は内田樹の話芸が冴えてます。