アーサー・C・クラーク『2001年宇宙の旅』、レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ『パリの夜―革命下の民衆』

 

2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫 SF 243)

2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫 SF 243)

 

 地球とははるかに隔絶した宇宙空間に恐怖症的なめまいを覚えつつ、それが人類という種の孤独でもあり、終幕において孤独が受け止められる様には心から安堵する。土星や木星、宇宙空間の描写は見てはいけないものを見ている感触があってドキドキするし、「人類と道具」テーマを背景に持つHALとの攻防も手に汗握る。SF特有のスケールの大きさ、射程の広さにひさしぶりに触れて楽しかった。映画よりこっちのほうが好きだな。

 

パリの夜―革命下の民衆 (岩波文庫)

パリの夜―革命下の民衆 (岩波文庫)

 

 革命前のパリの夜の風物を、「観察するふくろう」としてスケッチ風に描く…というのは三分の一ほどで、残りは革命を扱う歴史ものになる。大仰で芝居的な「夜」を楽しんでいたらいきなり大革命の混乱に突き落とされるわけで、正直言って後半は流し読んだ。それにこの著者は客観を決め込んで意見を変えたり見ていないものを見た風に装ったりするので、いちいち真剣に付き合ってられないというか、まあフランス革命に興味を持つ人はなにか得るものがあるかもしれない。