大泉黒石『黄夫人の手』、ヴォルフガング・シヴェルブシュ『闇をひらく光―19世紀における照明の歴史』

 明けましておめでとうございます。今年は詩集を出します。

 大正時代の作家・大泉黒石の選集。こういう本はとても貴重なのだけど、内容は可もなく不可もなくといった感じ。味のある文体もだんだんと丸くなっていった。集中のベストは、ドイツロマン派から想を得たような趣の「青白き屍」。この作家、いくつかの作品で投げやりな省略を行っていて、それがなんとも不安な夢にも似た感触を生んでいる。

 

闇をひらく光―19世紀における照明の歴史

闇をひらく光―19世紀における照明の歴史

 

 電気以前の照明の技術の発展、および街路やサロンや舞台の照明の文化史。新技術の誕生からそれが産業化され、快適さとともに家庭内に一種の強制力を持ち込む(よって反発も生む)過程が興味深い。この点、現代でも事情は全く同じ。また、パリの治安維持のために用いられた街灯の社会的な分析を通して、照明の持つ政治性を明らかにする段、あるいは明かりの祝祭的な分析など、読みどころは多い。