オーギュスト・ブランキ『天体による永遠』、『八木重吉全詩集〈1〉』

天体による永遠 (岩波文庫)

天体による永遠 (岩波文庫)

ベンヤミンからの流れで読んだ。一九世紀、その生涯の大半を牢獄に過ごした革命家・ブランキによる宇宙論。世界を構成する素材の有限と時間の無限を前提にし、無限の中で有限の物質が組成されるなら膨大なバリエーションの世界が存在する、そして時間の永遠によってそれら世界は無限に反復される…という論旨。一読してわかるようにニーチェの永劫回帰と似た発想で、今で言う多世界解釈のはしりなのだろう。

ベンヤミンが言うようにこの宇宙観は「地獄」であり、自分も無限の観念にあてられて何度か気分が悪くなった。が、逆に考えれば無数の世界で別の生き方をしている自分や他人を肯定的に捉えることもできる。ともかく、幽閉生活の中で一個の精神が無限と対峙した偉大な書物だ。

八木重吉全詩集〈1〉 (ちくま文庫)

八木重吉全詩集〈1〉 (ちくま文庫)

宗教詩というジャンルがある。八木重吉の詩も一応はそれに分類されるのだろうが、重吉の場合は信仰に重ねて「静けさ」「悲しさ」そして「詩」への憧れがある。そうした憧れの中でひたぶるに見つめられた自己、あるいは風景や日常は、希求の故に衒いを捨てて時におかしみをも誘う。これがなんともいえず素朴で美しい。静けさの中で得られた詩はいつまでも輝きを失うことはない。

「ほそい

 がらすが

 ぴいん と

 われました」