えのころ草

雨が降らないうちに

えのころ草を採りにきた

町外れの原っぱには風が吹いて

水気を含む空気の中に

無数のえのころが揺れている

どれも丸々と太った毛虫のようで

互いに体をこすりつけながら

刈り取られるのを今か今かと待っている

早速、籠から鎌を取り出して

ざくりざくりと刈っていけば

それは気持ち良さげに目を細め

もっとやってくれ

もっと鋭い刃で切ってくれと

ビロード色の鼻を鳴らす

夢中で鎌を動かしていると

やがて西の空に雲がわき

慌てて籠を背負って引き返す途中

降り始めた雨に追われて

近くのお堂に逃げ込む

しばらくは雨宿りかな

などと横に置いた籠の中では

雨に濡れたえのころが目を覚まし

ついに自らの不幸に気付いて

ぎっぎっ、ぎっぎっと

繭に包まれたおかいこみたいに

小さな体を震わせるのだ