2013-06-23 方向感覚 詩 駅ビルの中で方角を見失ってしまう エレベーターの混雑や エスカレーターの昇り降りで 心は6Fあたりをいつまでもさまよう 閉店間際に ようやく辿り着いた書店では 探している本は見つからなくて 帰り道に喫茶店の前を通りがかると ガラスに甲虫が張り付いているのが 不吉な呪文となって浮かび上がる 行き先表示もなしに どの方向に行けばいいんだろう 遠く高速道路のライトが並んでいる向こう 作りかけたような高架の上を 大きな月が降りていく 「かぶとむし日記」月夜に飛び去りぬ 高木一恵