黒猫

泳ぐ人々の

夢で見られた

歌の練習をした廃屋に

きみの写真が飾ってある

と言ってくれたっけ

でもそうやって

憧れているわけにもいかない

細かな雨をまとった電車は

地面の下に

郊外を滑り落ちていく

あの柱時計の周りを行けば

きっと会えるかもしれない

枝を離れたばかりの

いつもと違う花を

飲み込んだ心臓は

新しい血になればいいと

ぱくりとドーナツを食べて

血になるはずだと

猫は言うんだけど

本当に?