野村修『ベンヤミンの生涯』、渡辺守章『パリ感覚』

ベンヤミンの生涯 (平凡社ライブラリー)

ベンヤミンの生涯 (平凡社ライブラリー)

ベンヤミン入門に手に取った。ベンヤミンが生涯を通じて関わることになった「天使」のイメージをひとつの軸に、第二次大戦において彼が「境を越える」までの歩みを概観する。難解でいまいちこれという理解は得られなかったが、苦悩に満ちた生涯とその真摯な姿勢ははっきりと感得できた。これから関連書にあたって彼の思想の細部を詰めてみたい。

花の都と呼ばれ世界に名だたる都市はどのようなトポスの上に成り立っているか。セーヌが貫流し中心に大聖堂を持ち迷宮のようなシステムを抱えるパリの力学を論じる。規範文法にしても一九世紀のパリ大改造にしても、なにかしら規範に牽引されるのが常で、それゆえ行政機関も融通が効かない…などなど、著者の経験を交えてエッセイ的に語られるが、結局パリの複雑さを見せつけられるに終始したような。「五月革命は休暇ムードだった」という証言や記号論的な分析など、当時の知的風土を感じさせてどこかノスタルジックだった。