レオ・ペルッツ『夜毎に石の橋の下で』、エルヴェ・ギベール『召使と私』

夜毎に石の橋の下で

夜毎に石の橋の下で

中世プラハを舞台に、ルドルフ二世、ラビ・レーウ、商人マイスルといった実在の人物を軸にして幻想的な物語が繰り広げられる。十五の短篇はそれぞれが奇妙な興趣に満ちているだけではなく、そのおぼろげな繋がりから全体像が描き出され、愛と破滅の物語を、あるいはプラハの街そのものを形作っている。非常にウェルメイドというか安心して読める一冊で、このような本を手元に置くのはとても幸福なことだと思う。いつかまたプラハの夜をさまよいたい。

召使と私―そしてギベール写真集『孤独の肖像』抄

召使と私―そしてギベール写真集『孤独の肖像』抄

功成り名遂げた老人が若い召使を抱えるが、この召使が曲者で老人は支配されていく…と筋立てだけ見ればありがちな話。しかし作者が死の床にあって創作を続けたエルヴェ・ギベールということで、作中で老人が衰弱していくのを召使が生かさず殺さず世話をする様子など、微妙に闘病生活が透けて見えるし、滑稽小説と称しているもののブラックすぎて慄然としたものを感じずにはいられない。死を前にすると「滑稽」もこうまで苛烈になるのだろうか。